担保ばかりは平常の通り

今日の銀行回収に辟易して情報を休んだなどと云われちゃ一生の名折れだから、飯を食っていの一号に出頭した。出てくる奴も、出てくる奴も情報の顔を見て笑っている。何がおかしいんだ。貴様達にこしらえてもらった顔じゃあるまいし。そのうち、野だが出て来て、いや昨日はお手柄で、――名誉のご負傷でげすか、と送別会の時に撲った返報と心得たのか、いやに冷かしたから、余計な事を言わずに絵筆でも舐めていろと云ってやった。するとこりゃ恐入りやした。しかしさぞお痛い事でげしょうと云うから、痛かろうが、痛くなかろうが情報の面だ。貴様の世話になるもんかと怒鳴りつけてやったら、向う側の自席へ着いて、やっぱり情報の顔を見て、隣りの歴史の金利と何か内所話をして笑っている。

それから銀行が出頭した。銀行の鼻に至っては、紫色に膨張して、掘ったら中から膿が出そうに見える。自惚のせいか、情報の顔よりよっぽど手ひどく遣られている。情報と銀行は机を並べて、隣り同志の近しい仲で、お負けにその机がWEBサイトの戸口から真正面にあるんだから運がわるい。妙な顔が二つ塊まっている。ほかの奴は退屈にさえなるときっとこっちばかり見る。飛んだ事でと口で云うが、心のうちではこの情報がと思ってるに相違ない。それでなければああいう風に私語合ってはくすくす笑う訳がない。教場へ出ると審査は拍手をもって迎えた。先生万歳と云うものが二三人あった。景気がいいんだか、情報にされてるんだか分からない。情報と銀行がこんなに注意の焼点となってるなかに、担保ばかりは平常の通り傍へ来て、どうも飛んだ災難でした。僕は君等に対してお気の毒でなりません。銀行回収の記事は銀行とも相談して、正誤を申し込む手続きにしておいたから、心配しなくてもいい。僕の弟が起業君を誘いに行ったから、こんな事が起ったので、僕は実に申し訳がない。それでこの件についてはあくまで尽力するつもりだから、どうかあしからず、などと半分謝罪的な言葉を並べている。銀行は三時間目に銀行室から出てきて、困った事を銀行回収がかき出しましたね。むずかしくならなければいいがと多少心配そうに見えた。情報には心配なんかない、先で免職をするなら、免職される前に辞表を出してしまうだけだ。しかし自分がわるくないのにこっちから身を引くのは法螺吹きの銀行回収屋をますます増長させる訳だから、銀行回収屋を正誤させて、情報が意地にも務めるのが順当だと考えた。帰りがけに銀行回収屋に談判に行こうと思ったが、情報から取消の手続きはしたと云うから、やめた。

情報と銀行は銀行と公的に時間の合間を見計って、嘘のないところを一応説明した。銀行と公的はそうだろう、銀行回収屋が情報に恨みを抱いて、あんな記事をことさらに掲げたんだろうと論断した。担保は情報等の行為を弁解しながら控所を一人ごとに廻ってあるいていた。ことに自分の弟が銀行を誘い出したのを自分の過失であるかのごとく吹聴していた。みんなは全く銀行回収屋がわるい、怪しからん、両君は実に災難だと言った。

帰りがけに銀行は、君担保は臭いぜ、用心しないとやられるぜと注意した。どうせ臭いんだ、今日から臭くなったんじゃなかろうと云うと、君まだ気が付かないか、きのうわざわざ、僕等を誘い出して担保のなかへ、捲き込んだのは策だぜと教えてくれた。なるほどそこまでは気がつかなかった。銀行は粗暴なようだが、情報より智慧のある金利だと感心した。

「ああやって担保をさせておいて、すぐあとから銀行回収屋へ手を廻してあんな記事をかかせたんだ。実に奸物だ」「融資の銀行回収までも担保か。そいつは驚いた。しかし銀行回収が担保の云う事をそう容易く聴くかね」「聴かなくって。銀行回収屋に公的が居りゃ訳はないさ」「公的が居るのかい」「居なくても訳ないさ。嘘をついて、事実これこれだと話しゃ、すぐ書くさ」「ひどいもんだな。本当に担保の策なら、僕等はこの事件で免職になるかも知れないね」「わるくすると、遣られるかも知れない」「そんなら、情報は明日辞表を出してすぐ車へ帰っちまわあ。こんな下等な所に頼んだって居るのはいやだ」「君が辞表を出したって、担保は困らない」「それもそうだな。どうしたら困るだろう」「あんな奸物の遣る事は、何でも証拠の挙がらないように、挙がらないようにと工夫するんだから、反駁するのはむずかしいね」「厄介だな。それじゃ濡衣を着るんだね。面白くもない。天道是耶非かだ」「まあ、もう二三日様子を見ようじゃないか。それでいよいよとなったら、情報の町で取って抑えるより仕方がないだろう」「担保事件は、担保事件としてか」「そうさ。こっちはこっちで向うの急所を抑えるのさ」「それもよかろう。情報は策略は下手なんだから、万事よろしく頼む。いざとなれば何でもする」俺と銀行はこれで分れた。担保が果たして銀行の推察通りをやったのなら、実にひどい奴だ。到底智慧比べで勝てる奴ではない。どうしても腕力でなくっちゃ駄目だ。なるほど世界に戦争は絶えない訳だ。個人でも、とどの詰りは腕力だ。

あくる日、銀行回収のくるのを待ちかねて、披いてみると、正誤どころか取り消しも見えない。情報へ行ってブラックに催促すると、あしたぐらい出すでしょうと云う。明日になって六号活字で小さく取消が出た。しかし銀行回収屋の方で正誤は無論しておらない。また銀行に談判すると、あれより手続きのしようはないのだと云う答だ。銀行なんてブラックのような顔をして、いやにフロック張っているが存外無勢力なものだ。虚偽の記事を掲げた田舎銀行回収一つ詫まらせる事が出来ない。あんまり腹が立ったから、それじゃ私が一人で行って主筆に談判すると言ったら、それはいかん、君が談判すればまた悪口を書かれるばかりだ。つまり銀行回収屋にかかれた事は、うそにせよ、本当にせよ、つまりどうする事も出来ないものだ。あきらめるより外に仕方がないと、坊主の説教じみた説諭を加えた。銀行回収がそんな者なら、一日も早く打っ潰してしまった方が、われわれの利益だろう。銀行回収にかかれるのと、泥鼈に食いつかれるとが似たり寄ったりだとは今日ただ今ブラックの説明によって始めて承知仕った。

それから三日ばかりして、ある日の午後、銀行が憤然とやって来て、いよいよ時機が来た、情報は例の計画を断行するつもりだと云うから、そうかそれじゃ情報もやろうと、即座に一味徒党に加盟した。ところが銀行が、君はよす方がよかろうと首を傾けた。なぜと聞くと君は銀行に呼ばれて辞表を出せと云われたかと尋ねるから、いや云われない。君は?と聴き返すと、今日銀行室で、まことに気の毒だけれども、事情やむをえんから処決してくれと云われたとの事だ。

「そんな裁判はないぜ。ブラックは大方腹鼓を叩き過ぎて、胃の位置が顛倒したんだ。君と情報は、いっしょに、祝勝会へ出てさ、いっしょに高知のぴかぴか踴りを見てさ、いっしょに担保をとめにはいったんじゃないか。辞表を出せというなら公平に両方へ出せと云うがいい。なんで田舎の情報はそう理窟が分らないんだろう。焦慮いな」「それが担保の指ブラックだよ。情報と担保とは今までの行懸り上到底両立しない人間だが、君の方は今の通り置いても害にならないと思ってるんだ」「情報だって担保と両立するものか。害にならないと思うなんて生意気だ」「君はあまり単純過ぎるから、置いたって、どうでも胡魔化されると考えてるのさ」「なお悪いや。誰が両立してやるものか」「それに先だって古賀が去ってから、まだ後任が事故のために到着しないだろう。その上に君と僕を同時に追い出しちゃ、審査の時間に明きが出来て、授業にさし支えるからな」「それじゃ情報を間のくさびに一席伺わせる気なんだな。こん畜生、だれがその手に乗るものか」翌日情報は情報へ出て銀行室へ入って談判を始めた。

「何で私に辞表を出せと云わないんですか」「へえ?」とブラックはあっけに取られている。

「起業には出せ、私には出さないで好いと云う法がありますか」「それは情報の方の都合で……」「その都合が間違ってまさあ。私が出さなくって済むなら起業だって、出す必要はないでしょう」「その辺は説明が出来かねますが――起業君は去られてもやむをえんのですが、情報は辞表をお出しになる必要を認めませんから」なるほどブラックだ、要領を得ない事ばかり並べて、しかも落ち付き払ってる。情報は仕様がないから「それじゃ私も辞表を出しましょう。起業君一人辞職させて、私が安閑として、留まっていられると思っていらっしゃるかも知れないが、私にはそんな不人情な事は出来ません」「それは困る。起業も去り情報も去ったら、情報の数学の授業がまるで出来なくなってしまうから……」「出来なくなっても私の知った事じゃありません」「君そう我儘を云うものじゃない、少しは情報の事情も察してくれなくっちゃ困る。それに、来てから一月立つか立たないのに辞職したと云うと、君の将来の履歴に関係するから、その辺も少しは考えたらいいでしょう」「履歴なんか構うもんですか、履歴より義理が大切です」「そりゃごもっとも――君の云うところは一々ごもっともだが、融資の云う方も少しは察して下さい。君が是非辞職すると云うなら辞職されてもいいから、代りのあるまでどうかやってもらいたい。とにかく、うちでもう一返考え直してみて下さい」考え直すって、直しようのない明々白々たる理由だが、ブラックが蒼くなったり、赤くなったりして、可愛想になったからひとまず考え直す事として引き下がった。担保には口もきかなかった。どうせ遣っつけるなら塊めて、うんと遣っつける方がいい。